RSウイルスワクチンについて
今年1月から、RSウイルスワクチンのアレックスビー®の接種が全国で開始されています。
RSウイルスとは
RSウイルスはパラミクソウイルスの一種です。
呼吸器に感染した細胞が多核巨細胞(合包体)を形成するので、RSウイルス=Respiratory Syncytial virus(呼吸器合包体ウイルス)と名付けられています。
RSウイルスと聞くと、真っ先に子供の感染症が思い浮かぶのではないでしょうか。
私自身、子供からRSウイルスをうつされたことがあり、結構辛い思いをした記憶があります。
上気道炎症状が主体で、発熱はさほどではないですが、喉の痛みや痰絡みの咳がかなりしつこく、1週間ほど続きました。普通の風邪より呼吸器症状が強いと感じました。
RSウイルスに感染すると、典型的には4~6日の潜伏期間を経て、発熱・鼻汁などの症状が現れ、咳などの症状が1週間くらい続いたのちに治ります。
しかし重症化することがあり、ウイルス性肺炎や細気管支炎を引き起こすことがあります。
特に慢性呼吸器疾患(COPDや間質性肺炎など)の基礎疾患がある御高齢の方において急性の重症肺炎を起こす原因となることが知られていて、時に長期療養施設内での集団発生が問題となる場合があります。
ウイルス性肺炎というと、初期のコロナウイルス感染の恐ろしさが想起されますが、コロナウイルスとRSウイルスの臨床的な違いとして、RSウイルスには現在も治療薬が作られていないという点があります。
また心疾患をお持ちの方に感染したときに、心不全を引き起こして入院してしまうリスクにもなります。(これを心不全のトリガーといいます。)
RSウイルスの感染経路は主に接触感染と飛沫感染です。
感染した人との直接の接触・触った物品からの感染や、感染した人の咳、くしゃみを浴びたり、会話などをした際に口から飛び散るしぶきを浴びて吸い込むことにより感染することを言います。
そしてRSウイルスは生涯に渡って感染を繰り返します。
RSウイルスワクチン
今回60歳以上の方へのRSウイルスワクチン(アレックスビー筋注用®)の使用が認められるようになりました。
その中でも、①呼吸器の慢性疾患(喘息、COPD、間質性肺炎など)をお持ちの方、②心疾患(冠動脈疾患、心不全など)をお持ちの方、③免疫が弱っている方(担癌・抗癌剤治療中の方、糖尿病の方、その他免疫不全となる基礎疾患をお持ちの方)
に特に推奨されます。
RSウイルスには大きく分けてA型とB型がありますが、ワクチン接種でその両方への免疫を獲得できます。
ワクチン接種によって、1年目はRSウイルスによる下気道症状の発症に関して、約83%の有効性免疫が認められます。接種後2年目は約67%の有効性が保たれます。3年目以降は現在追跡調査中です。
ワクチンの副反応には、打った方の腕の痛みや、全身の疲労感が接種後1~3日後に出現する可能性があります。
まずはご相談ください
脇内科クリニックでも、RSウイルスワクチンの接種を開始しています。
ご希望の方はご相談ください。
私としましては、まずは上記①~③の方にお勧めしたいと考えています。
RSウイルス感染による入院リスクの増加は、基礎疾患のうちではうっ血性心不全が最も多いというデータがあります。
そのため特に心不全で入院歴のある方には強くお勧めしたいです。
また小児を介して感染することも多いので、お孫さんと同居している方など小児とよく接触する方も接種を検討したほうがよいかもしれません。
宜しくお願い致します。
脇内科クリニック 脇 広昂
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